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2018.05.09

【特集】プラス思考でオリンピック銀メダルの輝き再現へ…男子フリースタイル65kg級・樋口黎(日体大助手)


樋口黎(日体大助手)

 国民を熱狂させるオリンピックの余韻があるのは、大会後のほんのわずかの期間。スポーツ界はすぐに次のオリンピックへ向けて動き出す。情報があふれ、時代の流れが速い現代では、コンスタントに活躍していない選手は、メダリストといえども忘却の彼方に追いやられてしまうのが現実だ。

 2016年リオデジャネイロ・オリンピックの男子フリースタイル57kg級で銀メダルを獲得し、男子レスリングの伝統をアピールした一人が樋口黎(現日体大助手)。

 だが、この冬、全日本チームの闘いの中に樋口の名前はなかった。昨年12月の全日本選手権は2階級上の65kg級に挑み、2回戦で新進気鋭の乙黒拓斗(山梨学院大)に敗北。乙黒や王者の高谷大地(自衛隊)が世界へ飛躍して国際舞台で活躍した。樋口は、もう忘れられた存在か?

 いや、3月の卒業式にはいくつかのメディアが訪れ、「オリンピック2大会連続メダルを誓う」といったコメントが報じられた。「マカロン王子」(好物がマカロンのため)の輝きは、まだ消えていない。6月の明治杯全日本選抜選手権で優勝すれば、その輝きは再び激しく燃え上がるだろう。

強豪選手といえども、すぐに結果を出すのは難しい階級アップ

 昨年は61kg級に上げてアジア選手権3位、全日本選抜選手権2位などの成績を残した。全日本選手権は、体重増加と早朝計量の実施、何よりもオリンピック階級である65kg級に挑み、階級アップの壁に直面した。それでも「階級に合った体ができておらず、未熟な部分がまだあることが分かった。この冬はその課題に取り組んできた。自分の理想に向けてのレスリングが出来あがりつつあると思います」と気持ちは前向きだ。

昨年12月の全日本選手権で乙黒拓斗(山梨学院大)と闘う樋口黎(赤)=撮影・矢吹建夫

 階級アップは簡単ではない。リオデジャネイロの決勝で闘ったウラジーミル・キンチェガシビリ(ジョージア)も65kg級での闘いを決意し、先週の欧州選手権は65kg級に出場したが、3位に終わった。

 天才的な成績を残していたリオデジャネイロ86kg級王者のアブデュラシド・サデュラエフ(ロシア)も、階級を上げた昨年の世界選手権では優勝を逃した。2015年65kg級世界王者で、階級を上げた昨年、一気に70kg級世界一へ上り詰めたフランク・チャミゾ(イタリア)も、欧州選手権74kg級は3位に終わった。格闘技における階級の壁は低くない。

 それでも、樋口を勇気づけているのが、高谷と乙黒が世界トップレベルの実力を見せたことだ。「ここを勝ち抜ければ、自分も世界で通じる、ということですよね」-。

 2人の国際舞台での活躍を知った時は、「日本選手が世界で活躍できることを証明してくれてうれしかった。彼らを倒して上に行く。どうやって倒そうかと、わくわくした気持ちになっている」という。

樋口をさらに勇気づける湯元健一コーチの復帰

日体大の練習で、湯元健一コーチ(左)とオリンピック銀メダリスト対決

 ライバルの活躍を聞いて、「世界でも勝つ選手なんだ…。生半可な練習では、勝てない」と気を引き締めて練習するのは、間違いとは言い切れまい。しかし、前置きがあったとしても、「勝てない」という否定語が入る考えは、結局のところマイナス思考だ。

 対して、「勝てば、オレが世界一だ」というのはプラス思考。統計があるわけではないが、世界・オリンピック王者は、9割以上、もしかしたら10割がプラス思考の持ち主ではないか。

 オリンピック決勝の大舞台でも、まったくあがることなく闘った樋口のハートも、間違いなくプラス思考。この冬、ライバルがイラン遠征、アジア選手権、ワールドカップで鍛えたのに対し、自身は国際経験を積めなかったことに対しても、「体を大きくする時間がしっかり取れたと考えればいい」と言い切った。こうしたプラス思考は、大きな強みとなろう。

 4月から樋口をさらに勇気づけるのが、2年間、外に出ていた湯元健一コーチが日体大教員としてコーチに戻ってきたこと。リオデジャネイロ大会へ向けて、本命対抗を追い抜いて日本代表となったのは、オリンピック銀メダル(当時は銅メダル=ドーピングによる繰り上がり)の実力を持ち、体重が同じくらいの湯元コーチの指導があったからだ。

2016年3月のオリンピック・アジア予選で勝ち、湯元コーチと抱擁して喜ぶ樋口=撮影・池田安佑美

 「心強いです」。だが、樋口はすぐに「この2年間、井上コーチ(貴尋=4月からレッスル・アカデミーのコーチへ)に自分にはない技を多く教えてもらいました」と強調した。誤解を招かないように気を遣い、慎重に言葉を選ぶあたりに人間としての成長も感じられる。

 事実、グレコローマンでの実績もある井上コーチからは、差しに対する守りの技術、一本背負い、がぶり返しなど、闘いの幅を広げる技術を教えてもらった。その感謝の気持ちは忘れない。湯元コーチの復帰を歓迎する言葉だけを言ってしまっては、井上コーチから受けた恩を踏みにじることになる。感謝を口にしたうえで、「湯元コーチから片足タックルやハイクラッチ・タックルを修正してもらいたい」と続けた。

 65kg級には、昨年の世界選手権61kg級5位、U-23世界選手権61kg級優勝の中村倫也(博報堂DYスポーツ)も参戦することになった。樋口にとっては分が悪い相手。壮絶な激戦階級となる様相だが、人間として成長した樋口が、プラス思考で日本代表へ挑む!







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