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2018.06.25

【全日本選抜選手権・特集】悪性リンパ腫に打ち勝った不屈の選手が復活優勝!…女子68kg級・渡利璃穏(アイシン・エィ・ダブリュ)

(文=布施鋼治、撮影=矢吹建夫)

劇的な復活優勝を遂げ、応援にこたえる渡利璃穏

 悪性リンパ腫に打ち勝った不屈のレスラーが復活V。全日本選抜選手権の女子68㎏級で、約1年10ヶ月ぶりに実践マットに復帰した渡利璃穏(アイシン・エイ・ダブリュ)が2試合を勝って見事に復活優勝を遂げた。

 関千晶との決勝では、第2ピリオド残り約24秒で2-2と追いつかれた。タイスコアの場合、ラストポイントを取った方が勝者となるので、このままなら関の手が上がる。緊迫した空気が流れる中、渡利は残り8秒、相手を場外に押し出して逆転勝ちを収めた。

 「(追いつかれても)絶対に勝ってやるという思いしかありませんでした」。2016年リオデジャネイロ・オリンピックの約2ヶ月前、胸に違和感を覚えた。検査の結果、腫瘍が見つかった。せっかくつかんだチャンスを逃したくない、とリオデジャネイロにはそのまま出場し(初戦敗退)、帰国後、精密検査を受けた。

 悪性リンパ腫だった。渡利は悲しみに打ちひしがれた。「もうオリンピックを目指すどころか、レスリングもできなくなるんじゃないか」

 長い闘病生活。抗ガン剤治療が始まると、全身に痛みが走った。「手には小さい水ぶくれができ、パンパンに腫れ上がった。治療の最初の頃は増量していたので体力もあったけど、後半には体力も落ちていたので吐き気があってしんどかった」

 実家のある島根県で治療を受けたかったが、練習の拠点を置く愛知県の病院の方が治療環境が整っていると説得され、自宅から通院しながらひとりでガンと向き合った。「ひとりで家にこもっていました。何もできなかったので、すごく苦しかった」

 ほとんど寝たきりの生活。起き上がると立ちくらみがした。当たりまえのようにレスリングができた日々を懐かしく思った。「嫌だなぁ、と思いながら練習していたことが情けなく感じることもありました」

「どんなに調子が悪くても、自分の力を試したかった」

 治療のかいがあって、昨年9月からは少しずつ体を動かせるようになっていった。「まずは普通の運動ができるところまで体を戻さなければいけなかった」

1年10ヶ月ぶりの実戦マットとなった初戦

 担当医から「レスリングができるよ」とGOサインを出されても、不安だった。「もう一度気持ちを(オリンピックを狙えるレベルまで)持っていくことができるのか」「もう一度体を作り直すことができるのか」-。

 マット練習の再開は今年1月になってからのこと。体力の衰えを感じた。「自分では反応しているつもりでも、体の動きが遅かったり、できなかったりで、うまくいかない。組み手も力負けするので、同階級の子とやる時には気をつけなければ、けがをしてしまうのではないかと思うくらい鈍かった」

 久しぶりに再開した練習の先に見据えた最初の目標は、この大会に出場することだった。「どんなに調子が悪くても、出場して、自分がどこまでできるのか試したかった」

 階級選びは難航した。当初は65㎏級にエントリーしようと考えていたが、この階級の全日本チャンピオンの土性沙羅が肩の手術のために欠場するという知らせを受け、68㎏級に出場することを決めた。「この階級だったらプレーオフもない。世界選手権も狙えるチャンスだと思ったので」

 10月にハンガリーで行われる世界選手権では優勝を目指す。「今まで68㎏級は闘ったことがない階級。どこまでできるのか、というのが正直なところ。思い切り楽しんでできたらいいなと思っています」

 もう腫瘍の治療は経過観察のみ。最終的に落ち着く階級は熟考中ながら、奇跡の復活を遂げた渡利の想いは東京まで届くか。

リードされた終盤、粘ってタックルを決めた

応援してくれた人とともに







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