オリンピック前年を迎えた。2020年東京オリンピックまで、あと1年7ヶ月。今年の世界選手権(9月、カザフスタン)はオリンピックの第1次予選。5位以内に入ればオリンピックの出場枠を手にでき、3位以内なら日本代表に内定する。選手、そして強化スタッフにとってこれまで以上に気合を入れるべき年を迎えた。
日本協会の西口茂樹・強化本部長と赤石光生・副本部長に、2018年の闘いを振り返ってもらい、2019年の強化計画を聞いた。(司会=布施鋼治、樋口郁夫)
──新春対談ですが、まずは2018年を振り返っていただきたいと思います。お二人にとっては何かと慌ただしい1年だったと思います。
西口 本当にそうですね。3月にパワハラ問題が出てきて、僕が強化本部長、赤石先輩が強化副本部長の任務についたのは4月になってからのこと。それから本当に慌ただしかった。
赤石 本当にそうですね(苦笑)。そうした中、初の大きな国際大会として迎えた8月のアジア大会(インドネシア)で、初めて金メダル「0」という女子の不振は予想外でした。
西口 2ヶ月後の世界選手権(ハンガリー)につなげるだけの成績を残す、という流れを想定していましたからね。
赤石 勝てると思って行ったら、思い切り負けた大会でした。まあ、メダルは取りましたが。
西口 前強化本部長が外れたあと、まず何をしたらいいのかが、はっきり分からなかった。すべて手さぐりの状態だったけど、振り返ってみれば甘かった。「何とかなる」と思っていた自分を恥じます。
赤石 ただ、アジア大会の敗北は、「なぜ負けたのか?」という根本的な問題を改めて考えさせてもらえるいい契機になりました。東京オリンピックで同じことが起きたら洒落にならないですからね。
──むしろ、問題点が見つかったからよかった、と。
赤石 いい薬になったような気がします。でも、あの負けでコーチ陣も「これからどうしたらいいのか」ということが具体的に見えてきたんじゃないですかね。
──アジア大会では具体的に何が不振の原因だったと分析していますか?
赤石 我々の体制になってから、まずウエートトレーニングや栄養面の強化など男子がやっていることを女子に取り入れようとしました。最初は8月のアジア大会に間に合うと思っていましたが、結局、準備だけで終わってしまった。忙しさにかまけて、志土地(翔大)コーチに女子を預けてしまった責任は我々にあると思います。
西口 体制が変わってから練習量が落ちたことも大きかった。志土地コーチから指摘されましたが、あの時点では、まだ選手に対して遠慮があったことも否定できません。
──どうやって、その遠慮を払拭したんですか。
西口 アジア大会の後、志土地コーチが至学館を拠点とする8人の世界選手権代表の一人一人とコミュニケーションの場をつくってくれたことで、選手との距離感が縮まったことがきっかけです。
赤石 それにしても、世界選手権でよく巻き返せたと思いますよ。
西口 アジア大会前は練習量が足りなかったけど、「勝つためには何をしなければならないのか」という覚悟も足りなかったんだと思う。
赤石 そうですね。コーチ陣も今までとは違うやり方を模索していた。そのあたりの戸惑いはあったと思う。
西口 北海道で大地震があった影響で、9月中旬に旭川でやる予定だった女子合宿を、急きょ至学館大に変更して実施した。至学館では10人の代表のうち8人が練習している。現地に行ったことで、選手との距離も縮まり、話すことも出てきた。あのタイミングで至学館で合宿ができたことは本当に良かったと思いますね。
──パワハラ問題が発生した直後の就任なので、「言ってはいけないこと」を気にするあまり、選手とのコミュニケーションが億劫になってしまったことは?
西口 僕はきつい言葉とパワハラは違うと思っています。言ってはいけない言葉があるのは当たりまえの話なんですが。
赤石 信用・信頼の回復が一番重要だったと思いますね。
《続く》=次回掲載は1月3日になります。2日は男子グレコローマンの元旦練習の様子をお伝えします。