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2019.02.06

【特集】グレコローマン重量級を支えた向井孝博さん、今は広島県キッズ選手とわが子の成長に夢を託す


(文・撮影=樋口郁夫)

広島から参加した広島クラブの選手と向井孝博さん(後列右端)

 西日本を中心に59チームが参加した押立杯関西少年少女選手権(1月26日、大阪・高槻市総合体育館)。その中に、オリンピックとアジア大会に2度ずつ出場し、アジア大会で2位の成績を持つ往年の名選手がいた。自衛隊の男子グレコローマン74・82kg級で活躍した向井孝博さん。広島クラブのコーチとして5人の選手を率いて参加した。

 1988年ソウル・オリンピックのあと、選手生活に区切りをつけ、自衛隊を退官して故郷の広島へ。1994年の故郷・広島でのアジア大会に向けて復帰し、1993年アジア選手権(東広島市)では35歳にして銀メダルを獲得。グレコローマンの重量級を支えた選手だ。

 広島クラブ(衣川知孝代表=当時)に子供を通わせたことで同クラブとのつながりができた。2010年に広島で全国少年少女選手権が開催された時は、衣川代表のもとでチームの監督という重責へ。現在は、その座を山根進氏(日大OB)に譲り、コーチの一人として参加。週3回の練習に顔を出している。

セコンドとして選手に声援を送る向井さん

 自衛隊でレスリングを始め、グレコローマン一筋。本格的なフリースタイルの経験はないものの、レスリングの基本は同じ。最近は動画でトップレベルの技術を見ることもできるので、それを基に指導することもでき、グレコローマン専門だったことの不都合は感じない。

 オリンピックでの金メダルの量産により、「オリンピックを目指す」という気持ちを持ってマットに上がっている選手は少なくない。「そういう選手がいる以上、その気持ちにこたえられるような指導をしていきたい。やる以上は、全国王者を目指してしっかりやってほしい」という方針の一方、「楽しく、練習を通じて心身を鍛えてほしい」と、勝利至上主義に陥らないよう注意もしている。

「子供がその気にならないと…。親が勝手に走っても仕方ない」

地元アジア選手権での向井さんの活躍を報じる協会機関誌=1993年

 それは、自身の子供に対しても同じ。2人の男の子がいて、レスリングをやらせたが、ともに全国少年少女大会の優勝経験はなく、「2位が最高でした」。2人とも小学校でレスリングをやめ、中学にレスリング部がないためバスケットボールの道へ進むことになっても、レスリングを無理強いしなかった。

 それでも次男・識起(さとき)が広島国際学院高校へ進んで再びレスリングに戻った。ここでオリンピック出場の向井さんが高度な技術を教え、厳しい英才教育をほどこせば全国王者に手が届いたかもしれないが、「子供がその気にならないと…。親が勝手に走っても仕方ないでしょ」と笑う。

 関東の高校なら、時に大学の練習に加わって高度な技術に接し、意識が高まる場合もあろうが、広島ではそうした経験ができなかった。結局、3年間で全国高校グレコローマン選手権と国体の2位が最高だった。

 「強制」による成績では、それがなくなった時に行き詰ってしまう。本人がやる気になってくれればいいが、そうでない場合も多い。向井さんは取り巻く環境を受け入れ、本人の意思を待つ方法を選んだ。高校での作文に「お父さんを乗り越える」と書かれて、うれしかった経験があっても、無理強いはしなかった。

次男・向井識起が2人の学生トップ選手を破って全日本3位へ!

 識起は徐々に“開眼”した。向井さんは「同期に山田修太郎(秋田・秋田商高~現山梨学院大)という逸材がいて、いつも負けていた。それが悔しかったみたいだ」と振り返る。本人がトップを目指す気になったので、ようやく自衛隊の練習に参加させるなどの“エリート教育”を導入。本人は高校を卒業してもレスリングを続ける道を選んでくれた。

昨年12月の全日本選手権3位に入った向井識起(右端)。この日が19歳の誕生日だった=撮影・矢吹建夫

 昨年4月から半年間の自衛隊員としての教育を経て、大宮駐屯地勤務の選手としてマットに戻り、11月の全国社会人オープン選手権・男子グレコローマン82kg級で優勝。今年4月の体育学校入校を前にして全日本選手権出場を果たした。

 それどころか、学生トップ選手2人を下して3位に入賞する殊勲を挙げた。正確な記録は残っていないが、入校前に全日本のメダルを手にした高卒選手は、自衛隊初と思われる。血筋を感じさせる結果といえよう。

 「自衛隊の練習環境なら、これから伸びると思うんです。世界を目指してほしいです」。父として期待はふくらむが、「どこに行っても、『向井の息子』と言われますよね」と笑う。だが、それは二世選手共通の宿命。そのプレッシャーに負けるようでは、世界一にはなれまい。

 広島県キッズ選手、そして、我が子の成長が楽しみな向井さんだ。







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《オリンピック・レスリングNo.62》

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