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2019.05.15

【特集】616選手が集った“日本一やさしい大会”ザ・デストロイヤー杯港区大会、スポーツマンシップは天国に届いた!!

(文=布施鋼治、写真提供=本多尚基)

開会式直後の全体集合写真

 今年3月7日、米国・ニューヨーク州バッファローの自宅で静かに息を引き取った往年の名プロレスラー、ザ・デストロイヤーさん(享年88)の意をくむ「ザ・デストロイヤー杯 港区レスリング大会」が、5月4日、東京・港区スポーツセンターで開催された。

 2007年に第1回大会を開いた時の参加人数は100名に満たなかったが、回を重ね、12回目となった今大会は総勢616名もの選手が参加する大規模な大会となった。港区レスリング協会の村本健二理事長に大会のモットーを聞くと、「日本一やさしい大会」と答えた。

 日本一やさしい大会とはどういう意味?「子供の大会でも、だいたい強いチームがメダルの大半を持って帰る。でも、ウチは第1回から敗者も含め全員にメダルを贈ることになっています」

 村本理事長が“デストロイヤーの申し子”と評する同区レスリング協会副会長でフィギュアフォークラブ代表・本多尚基さんは敗者もリスペクトする姿勢はデストロイヤーさんの意向でもあったことを力説した。「デストロイヤーさんは日本のレスリングを見て、『ちょっと勝利至上主義に走りすぎている』と危惧していました。そこで、この大会をやるということになった時、『勝っても負けても次につなげられるような大会にしたい』ということになったのです」

大会特製のTシャツ、初心者の部…楽しんで参加できる大会

 力道山やジャイアント馬場さんと激闘を繰り広げたデストロイヤーさんは、リングを下りれば小中学校の教壇に立つ教育者だった。大学時代にはアメリカンフットボールとともにレスリングでも活躍している。そのキャリアを活かし、1970年代から木口道場の木口宣昭代表と交流。毎年夏休みになると、子供たちによる日米交流を積極的に行っていた。

開会式。デストロイヤーさんへの黙祷

 本多副会長は木口道場出身。木口氏からバトンを渡される形でデストロイヤーさんが引率する米国チームを招聘するようになり、デストロイヤー杯を立ち上げる数年前に日米交流試合を実現させた。それが契機となり、デストロイヤー杯とともに、港区唯一のレスリングクラブである「フィギュアフォークラブ」を設立した。クラブ名はもちろんデストロイヤーさんの代名詞である必殺技“足4の字固め”からとったものだ。

 港区とデストロイヤーさんには、もともと縁があった。全日本プロレスに助っ人として参戦していた頃、6年間に渡り港区麻布に居を構えていた。麻布十番納涼祭りでは毎年チャリティサイン会を行い、その収益は恵まれない子供たちに寄付していたという。そうした昔からの結びつきもあったので、港区教育委員会にデストロイヤーさんが名誉会長を務める大会の後援を頼むと、ふたつ返事で引き受けてくれた。

特製Tシャツを着た子供たち

 出場者全員にメダル贈呈のほかにも、デストロイヤー杯にはいくつかの特色がある。千葉・パラエストラ・チームリバーサル代表として選手を引率した鶴屋浩さんの証言。「デストロイヤー杯は年に一度のレスリング・フェスティバル。日本協会が主催している全国大会や全国選抜大会とはかなり違う。大会特製のTシャツが用意されていたり、初心者の部があったり…。主催者の本多さんがいろいろなことを考えているからでしょう。おかげで僕らのチームは楽しんで参加できています」

 初心者の部とは、小学1・2年、小学3・4年というカテゴリーにあるビキナーの部を指す。「成績が伸びなくて凹んでいるような子でも、この大会で活躍することで、また頑張ろうという気持ちになれる」(鶴屋さん)

 またフェスティバルの名に恥じることなく、初心者向けのレスリング教室(村本会長が音頭をとり、楽しいレスリングのイロハを教授)もあれば、一般の部やマスターズの部のトーナメントも用意されていた。デストロイヤー杯は単なる小中学生の大会ではない。

チャンピオンに負けを経験させる「天下一武道会」

 それだけではない。天下一武道会という漫画から飛び出したような名称のオリジナルのカテゴリーも用意されていた。出場者は直近の全国大会で1~3位に入賞した小中学生に限られ、1点を先取した者が勝つというルールを採用している。

大会パンフレットの表紙

 本多副会長は「ビキナーの部とは真逆の発想で作りました」と明かす。「チャンピオンには負けを経験させることも大事。16人制のトーナメントだったら、15人は負けて帰る。負けることで、謙虚に練習に臨んでもらう。指導者も介入しやすくなる」

 大会パンフレットをとってみても、通常のレスリングの大会のパンフレットとは大きく異なる。トーナメント表だけではなく、デストロイヤーさんからのメッセージ、そして出場する少年少女たちの40名に及ぶ一言インタビュー、出場した各クラブからの意気込みなど、500円という価格以上のクオリティーを感じさせる1冊に仕上がっていた。

 「大会が終わったら丸めて捨てるのではなく、記録だけではなく、記憶にも残る大会にしたいと思い、制作しました。帰宅したらデストロイヤーさんのメッセージを読み返して、何か感じることがあればいいと思います」(本多副会長)
 
 2ページに及ぶメッセージの中で、デストロイヤーさんはスポーツマンシップについて語っている。一部を抜粋してみよう。「自分の練習に集中する事はもちろん重要です。しかし特にチームメートが苦しんでいるときには、苦しんでいる仲間をサポートし、勇気づけることがとても重要です。これが真のスポーツマンシップの証です」

 天国のデストロイヤーさん、今年のデストロイヤー杯もスポーツマンシップにのっとった試合ばかりでしたよ。

▲楽しくレスリング!

▲シニアも楽しく苦しくレスリング!

▲閉会式後、フィギュアフォークラブの選手たち







JWF WRESTLERS DATABASE 日本レスリング協会 選手&大会データベース

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