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2019.08.16

【特集】東京オリンピック出場枠獲得にかける(3)…女子50kg級・入江ゆき(自衛隊)


(文=布施鋼治)

入江ゆき(自衛隊)

 「明治杯(全日本選抜選手権)の時は、ちょっとフワフワしている感じでしたね。対照的に、プレーオフの時には淡々と闘っていました」

 8月上旬、埼玉県朝霞市の自衛隊体育学校。入江ゆき(自衛隊)は笑顔とともに須﨑優衣(早大)との2連戦を振り返った。 6月15日の全日本選抜選手権では準々決勝で激突。第2ピリオドの残り2秒で逆転され、涙をのんだ。

 それから3週間後に行なわれたプレーオフ。入江は別人のような動きを見せ、6-1で勝利を収めた。全日本選抜選手権の時のように攻撃を仕掛けることにためらう姿はなく、つねに自分から積極的に攻撃を仕掛ける入江の姿があった。

 いったいどんな妙薬があったのか? 自衛隊の冨田和秀コーチは「整理しただけ」と打ち明ける。「何が不安だったかといえば、ルールの理解や守り方を、あやふやのまま続けていたこと。そういう部分を一度整理して、どんな状況になったらパッシブが来るのか、どんな範囲内であれば来ないのか。そしてラスト30秒をどう締めるのか。(専門家に)ルールの説明をしてもらいながら、その確認をしました」

7月のプレーオフで勝ち、世界選手権の出場権を手にした入江=撮影・矢吹建夫

 冨田コーチは「構えも見直しました」と続けた。「構えが良ければ、動きやすい」。

 入江も「考え方ひとつで全然違う」と力説した。「明治杯の時には、動きながら不安な部分があった。それがはっきりしたことで気持ちに整理がつきました」

 食生活も見直した。福岡県出身の入江は地元名産のうどんが好物だったが、うどんを口にすると体調を崩しやすいことに気づき、グルテンフリー(小麦をはじめとした穀物のタンパク質の主成分であるグルテンを除去した食事)になった。

 「好きだけど、小麦は合わない体質なのかと思いました。もう1年くらい小麦系の食べ物は摂っていません。(テニスの)ノバク・ジョコビッチもやっているという話を聞いて、自分もやってみたら体調がよくなりました」

強敵マリア・スタドニク! しかし「自分のスタイルを貫けば勝てる」

 50㎏級は、昨年の世界選手権決勝を須﨑と争ったマリア・スタドニク(アゼルバイジャン)を抜きに語れない。入江も大学生の頃に一度対戦し敗れているが、冨田コーチは「いつも通りの動きをしてくれたら問題はない」と太鼓判を押す。「ただ、去年のアジア選手権では自分からタックルに入って返されたりしていた。そういうところを注意すれば」と言う。

 スタドニクについての印象を訊くと、入江は「少しは意識するけど」と前置きしてから、本音を口にした。「相手云々より、自分のスタイルを貫けば勝てると思います」

最大のライバルと目されるマリア・スタドニク(アゼルバイジャン)

 昨年4月から自衛隊体育学校に指導者として復帰した2012年ロンドン・オリンピック金メダリストの小原日登美コーチは、最近の入江の成長ぶりに目を細める。「(もともと得意だった)飛びこむタックルだけではなく、近いところからの崩しもうまくなった」

 今年になってから、以前にも増して自分から周囲に話しかける機会が増え、笑顔も多くなってきた。昨年のプレーオフで須﨑に敗れて世界選手権代表の座を逸したのち、1ヶ月の半分程度は生まれ育った福岡県に帰省し、5歳から高校卒業まで指導を受けていた小倉商業高校の辻栄樹監督や家族とともに穏やかな日常を取り戻せたことと無関係ではない。

 「それまでの私は、うつ気味だったけど、そういう症状を辻先生に気づいてもらい、会った時にはいつも自分の話を聞いてもらいました。吐き出すだけで、(精神的に)すごく回復した気がします」

 世界選手権への出場は今回が初。迷いを断ち切った伏兵は、本命として東京オリンピックまで疾走するか。


2019年世界選手権=東京オリンピック第1次予選(9月14~22日、カザフスタン・ヌルスルタン)
女子50kg級代表・入江ゆき(自衛隊)
 1992年9月17日生まれ、26歳。福岡県出身。福岡・小倉商高~九州共立大卒。152cm。高校時代に2年連続で全国高校女子選手権優勝。九州共立大へ進み、2011~14年に48kg級で全日本学生選手権4連覇を達成。2012年世界大学選手権優勝など国際舞台でも実力発揮して自衛隊へ。2015年全日本選手権48kg級で初優勝。2017年は全日本女子オープン選手権で優勝。2018年はアジア大会2位のあと、50kg級で日本一へ。2019年アジア選手権で優勝した。
略歴(詳細) JWFデータベース UWWデータベース 国際大会成績
女子50kg級・展望 / 5位以内がオリンピック出場枠獲得、3位以内は協会規定により日本代表に内定






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《オリンピック・レスリングNo.62》

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