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2019.09.10

【特集】東京オリンピック出場枠獲得にかける(17)…男子フリースタイル74kg級・奥井眞生 (自衛隊)


(文=保高幸子)

奥井眞生 (自衛隊)

 2016年大会以来、3年ぶりに全日本選抜選手権を制した奥井眞生 (自衛隊)が、プレーオフも勝ち、フリースタイル74kg級の世界選手権代表となった。「次にいつ、こんなチャンスがくるか分からない。世界選手権でメダルを取って自分のオリンピック出場枠にしたい」と意気込む。

 奥井が代表の座を射止めると予想していた人は少なかっただろう。この階級は2017年に70kg級で世界3位となった藤波勇飛 (ジャパンビバレッジ) の牙城。奥井はこの3年間、全日本レベルの大会は3位止まりで、昨年の全日本選抜選手権では表彰台すら逃していた。

 藤波との初対戦は2017年11月の大学選手権の準決勝。奥井は40秒でテクニカルフォール負けを喫した。「(藤波選手は)強すぎる、と思いました」と照れ笑い。12月の全日本選手権では保坂健 (自衛隊)に、翌18年6月の全日本選抜選手権では三輪優翔 (日体大)に、12月の全日本選手権では藤波に再び負けた。

 とことん落ち込んだ。なぜ勝てないのか分からなかった。後輩の前で「もう駄目なのかもしれないな」という言葉が口からぽろっと出てしまうほどだったという。「弱気を見せてしまって、『しっかりしてくださいよ』と、ふだんならありえない励ましを後輩から受けた」ことがきっかけで、東京オリンピックまでは、どんな結果になってもやると決めていた決意が蘇った。

昨年12月の全日本選手権では、いいところなく藤波勇飛(赤)に黒星=撮影・矢吹建夫

 なぜ勝てないのか-。自分の試合映像を見直すことから始めた。「負けた試合は見たくなかったけど、『向き合うしかない』と思って。コーチに客観的なアドバイスをもらうことで、はっきり分かってきました」。

 答は、すぐそばにあった。ずっと言われ続けていた「構え」を見直したこと。「構えをしっかり」とは、ずっと言われていたこと。奥井は恥ずかしそうに「よく分かっていなかったんです。今まで、ほんまに漠然とレスリングしていたんです」と(出身の)和歌山のなまりで本音を語った。今年に入ってからやっと勝ち方が分かってきたのだと言う。

どん底からはい上がった「構え」と「パワー」で世界に挑む

 6月の全日本選抜選手権準決勝で藤波にフォール勝ち。それでも、「藤波選手のコンディションは(けがで)よくないのは分かっていたので」と、3週間後のプレーオフへすぐに気持ちを切り替えた。迎えた7月6日。お互い全力で技術を出し合う死闘で、少しでもミスをした方が負ける、という大接戦。残り12秒で奥井がローリングを決めて4-4に追いついたと思ったが、相手のチャレンジで3-4に修正された。

プレーオフに勝って世界選手権出場を決め、応援席にガッツポーズ=撮影・矢吹建夫

 奥井がセコンドに顔を向けると、コーチが興奮しきっていた。「そんなコーチたちの姿を見て驚きました」。それほどの試合なんだ、と逆に冷静になることができ、残り時間、すべてを使って攻めた。片足タックルから隙を見せない動きでバックを取り、残り1秒でローリングを返した。

 誰もが奥井の変化に驚いただろう。ふだんは差しとがぶりで闘うタイプの奥井から出た片足タックル。残り10秒でビハインドの状況を設定して行っていた練習が功を奏した。また、これまで焦って無理やりに入って返されることも多く、コーチからも「8割がた取れるという自信のある時だけ入る」よう指導を受けていた。構えなど基本を見直してから視野が広くなり、奥井には「今だ、というタイミングが分かるようにもなった」と試合運びに変化が出た。

 世界選手権での74kg級は、現世界王者ザウルベク・シダコフ(ロシア)、2012年ロンドン・オリンピック金メダルのジョーダン・バローズ(米国)、世界ランク1位のフランク・チャミゾ(イタリア)らスター選手が揃う。奥井の強みは大きな筋肉。自分でも「力は差がないと思う」と自信を見せる。

 特に広背筋が強く、引く力には自信がある。武器のローリングもかかるイメージができている。楽観視はしていないが、「臆していたら、せっかくつかんだこのチャンスが無駄になる。緊張とわくわく半々です」と、チャレンジャー精神で臨む。

 負けたことで自身を見直し、勝つべきところで勝った奥井。どん底からはい上がったパワーで、できることをすべて注いで出場枠を取りに行く。


2019年世界選手権=東京オリンピック第1次予選(9月14~22日、カザフスタン・ヌルスルタン)
男子フリースタイル74kg級代表・奥井眞生(自衛隊)
 1995年9月8日生まれ、24歳。和歌山県出身。和歌山・和歌山工高~国士舘大卒。熊野路ジュニア時代の2010年に全国中学生選手権優勝。和歌山工高時代は2012年インターハイ優勝のほか、国体グレコローマンで3連覇。国士舘大では2014年に1年生で両スタイルの全日本学生選手権を制した。2016年に全日本選抜選手権で優勝。その後、2018年世界大学選手権2位などの成績を残し、2019年の全日本選抜選手権とプレーオフを制して世界選手権へ。
略歴(詳細) JWFデータベース UWWデータベース 国際大会成績
男子フリースタイル74kg級・展望 / 5位以内がオリンピック出場枠獲得、3位以内は協会規定により日本代表に内定






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《オリンピック・レスリングNo.62》

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