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2019.12.01

【2019年東日本学生秋季新人戦・特集】強豪チームで鍛えられ、花開いた野球からの転向選手…フリースタイルB79kg級・能島裕貴(日大)

野球から転向し、初のタイトル獲得の能島裕貴と日大の富山英明監督(左)、内藤可三OB会幹事長

 毎年春と秋の2回行われる東日本学生選手権・新人戦のフリースタイルBグループとは、大学に進んでから競技を始めた選手か、高校時代に全国大会出場の経験のない選手によるトーナメント。リーグ戦の二部リーグの選手が多数を占めるが、大学王者を目指すチームからも、時に参加がある。

 今大会、79kg級に出場して優勝した能島裕貴(日大2年)は、小学校から兵庫・神戸高塚高校時代までは野球の選手。日大で、昨年1年生学生王者に輝いた田縁真大(福岡・小倉商高卒)や石黒隼士(埼玉・花咲徳栄高卒)、今季学生二冠を制覇した吉田ケイワン(埼玉・花咲徳栄高卒)ら強豪選手の間でもまれ、1年間は大会出場なしという下積みに耐え、栄冠を手にした。

 「うれしいです」と喜びの第一声を口にした能島は、すぐに「課題としていた常に自分から攻めることができなかったのが、引き続きの課題として残りました」と反省点を挙げた。それでも、「まあ、結果として優勝できたので、よかったかな」とも話し、うれしさと反省が入り混じった気持ちを吐露した。

 生粋の野球少年だった能島がレスリングをやることになったのは、週1回の野球部の練習オフ日に、トレーニングの一環としてレスリング部の練習に参加させてもらい、レスリングの面白さを感じたからだという。部の長和徹監督(日体大OB)から「大学でレスリングやってみろ」と勧められ、その気になった。

 一般入試で日大に進学し、富山英明監督に入部を直談判。体験入部を経て、素人ながらチームの一員になれた。日大が大学王者を多く輩出し、オリンピックを目指している選手がそろっていることは「先生に聞いて知っていました」と言う。

やったことが、すべて自分に返ってくるスポーツ

 だが、「どうせやるなら、強いところがいい。その中でもまれれば強くなれる」と、入部する気持ちが揺らぐことはなかった。強豪チームでも、時にレスリングの素人が入部志願してくるのは日大に限らないが、その場合は合宿所には入らず、近くのアパートに暮らして練習に参加するケースが多い。能島は志願して合宿所へ入ったというから、かなりの覚悟をもっての入部だった。

決勝戦、1点差を守り切った(赤が能島)

 実際にやってみると、高校時代に実績のある選手が集まっているチームだけに、神戸高塚高校で体験したレスリングのきつさとは、けた違い。団体競技と対人競技の違いも戸惑った。野球は、試合時間が長いこともあって練習時間も長い。「休みの日は、(昼食をはさんで)朝から晩までグラウンドにいました」だったのが、レスリングの練習は短時間に集中して行われ、心拍数の上がり方も大きく違う。未知の世界での闘いに「何回も挫折しそうになりました」と振り返る。

 1年生の時は、大会出場がなかった。富山監督は「けがが心配だった」という。進学後に競技を始めた選手のトーナメントであるBグループであっても、1年生と2年生では1年間のキャリアの差がある。本人は「試合に出たい」という気持ちだったそうだが、富山監督は安全を第一に考えた。周囲の話では、「最初は受け身もしっかりできなかった」そうなので、この判断は正しいだろう。

 2年生になって、ようやく春季新人戦への出場が認められた。日大で鍛えられているだけのことはあって、リーグ戦二部リーグの2選手をフォールとテクニカルフォールで撃破。決勝こそ、高校時代にレスリングはやっていなかったが、全国少年少女選手権6連覇の実績を持つ有川将史(東大=関連記事)に敗れたが、土台は作れたことを感じさせる結果だった。

 野球とは違う緊張感に襲われたという。「やったことが、すべて自分に返ってくるスポーツ。負けたら、『しっかり練習やってなかった』と思われますよね」。それがプレッシャーになるものの、頑張りにもつながる、というのがレスリングの印象だ。

「上で闘えるよう、きょうから再スタート」

この優勝を足がかりに、どこまで飛躍するか

 この優勝で、上を目指す気持ちが高まった。「明日から、ではなく、きょう帰ってからでも、上で闘えるように再スタートを切りたい」と言う。卒業するまでに、東日本の学生の大会では3位以内が目標で、すべての大会で上位を目指したいという。

 野球からの転向選手といえば、広島・近大福山高で甲子園まであと1勝だったという中森昭平選手が有名。日体大でレスリングを始め、全日本王者に5度輝き、1993年世界選手権では6位になった。東京・早稲田実高時代にハンカチ王子こと斎藤佑樹選手(現プロ野球日本ハム)の1年先輩だった中村大悟選手は、早大でレスリング部へ。2009年全日本大学グレコローマン選手権で2位へ躍進した(関連記事)。

 どの競技からの転向者でも、無限の道が広がっているのが若さであり、キッズ・レスリング全盛の現在でも、その理(ことわり)は変わらない。能島のこの2年間の努力は、さらに大きく花開くか。







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