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2020.01.22

【特集】大学と地域社会の連携で創設、キッズ~社会人の一貫クラブ「同志社クラブ」(小泉円代表)

創部5年目、やっと「形になってきた」(小泉円代表)という京都・同志社クラブ

 キッズ・レスリングの隆盛により、キッズから高校までの一貫クラブは珍しくなくなった昨今だが、キッズから大学、さらには社会人まで同じところで汗を流し、同じ名前がついているクラブは限られているのではないか。それを実行しているのが京都の「同志社クラブ」。

 スポーツ庁所管の「総合型地域スポーツクラブ」の一つである「京たなべ・同志社スポーツクラブ」の傘下クラブで、1987年の全日本大学選手権48kg級で1年生王者に輝いた小泉円氏(同志社大OB)が2015年に創設。同志社を愛し、レスリングを愛し、子どもたちが大好きな人間が運営するレスリング・クラブだ。

 創立当初は、ご多分にもれず勝つことができず、絶望的な気持ちに襲われた。昨年7月の全国少年少女選手権(和歌山市)では女子3年生28kg級で竝川珠璃選手が銀メダルを獲得。今月13日に大阪・吹田市で行われた押立杯関西少年少女選手権では、3・4年女子重量級で安見心選手が優勝し、それ以外に5人が入賞。「やっと形になってきました」と明るい表情を見せた。

5年をかけて全国2位を輩出、次の目標は…

 同志社大のレスリング部は、1945年に創設された西日本2番目の大学で(1番目は関学大)、西日本リーグ戦の優勝は18回という名門大学。卒業生でレスリングの指導に携わっている人も多いが、若年世代を育てる体制は大学内にはなかった。大学が地域社会との連携でスポーツの発展に貢献する方針を示した流れに乗り、小泉さんがキッズクラブを創設、同志社大OB選手も加わって一貫クラブとしてスタートした。

セコンドから試合を見守る小泉円代表

 練習場所は同志社大のレスリング道場。「無償で使え、マットを上げ下げする必要はありません。こうしたいい環境を使わない手はありませんよ」。しかし、環境はよくても、部員を集めるのは大変だった。10人くらいでスタートしたが、試合に出ても勝てないのが現状。「勝てなければ試合に出てくれないし、続けてくれない。どうしようかと思いました」と途方にくれた。

 幸い、近隣に京都八幡、立命館宇治、エンジョイ(大阪)、茨木(恩師の福田耕治代表)などの名門・伝統クラブがあり、出げいこでお世話になるとともに、奈良県、滋賀県のクラブなどにも声をかけて月1度程度、合同練習を開催。「少しずつ勝てるようになってきました」と言う。

 全国2位が出たことで、「次は全国チャンピオンの輩出ですね」と聞くと、「まだ、そこまでは行けません」と謙遜する。全国一になるには、週5~6日の練習が必要と見ているが、より多くの選手にレスリングの楽しさを教えるため、そこまで厳しくやるつもりはないようだ。

出場全選手がメダルと賞状を手にしたアルキメデス・キッズ大会=提供・小泉円代表

 「負けても、頑張れる選手をつくりたいんです」。強いチームを求めるあまり、素質のない選手を切り捨てることはしたくない。そこで考えたのが、「アルキメデス・キッズ大会」。西日本の大学で、大学に入学してからレスリングを始めた選手のために存在する大会のキッズ版で、4人のリーグ戦によって順位をつける。リーグ戦だから必ず3試合できる。1位から3位のほか、4位の選手には敢闘賞を授与するので、全員が賞状とメダルをもらえる大会だ。

 昨年12月に同志社大で開催し、120選手が集まったという。「普通の大会は、『出ても勝てないから』と、出ない選手もたくさんいます。でも、試合を何試合もこなせ、必ず賞状をもらえるということで、ウチのクラブは全員が出てくれました」と言う。“弱者をいたわる”と言うと語弊があるが、強者と初心者の差が大きくなっている現在、こうした大会を通じて自信とやる気を持たせ、レスリングを続けるモチベーションにつなげることも必要なのではないか。

「負けても頑張れる子をつくりたい」…小泉円代表(同志社大OB)

 小泉代表は同志社大時代、1年生大学王者のほか西日本学生選手権で4年連続優勝という快挙を達成。同級の日体大レギュラー選手でインカレ3度優勝の山下忍(現香川・高松クラブ代表)に勝ったこともある強豪だった。卒業後は建設会社に3年間勤務したあと、同志社女子大学の職員として勤務し、大学のコーチをやるなどしていた。

現役時代の小泉円代表(上)=1990年西日本学生春季リーグ戦、同志社大の優勝に貢献

 大学卒業と同時に第一線を退いたのは、「48kg級だと減量が厳しくて…」。後悔なく社会人になったのであり、やり残したことを自分の子供や後進に託す気持ちはない。「やはり、レスリングが好きなんでしょうね」との気持ちからのクラブ創設。長男と次男がお世話になっていた宇治レスリング教室(立命館宇治高校内)が活動を停止することになった時、「引き取るのが自分の使命かな」と思ったという。

 同志社を愛し、キッズから社会人まで「同志社」という名前で出場させるわけだから、いま汗を流しているキッズ選手も、同志社香里中学・高校~同志社大と進んでもらい、一貫強化、そして同志社大を再び西日本の王者にすることを目指しているかというと、「それはちょっと難しいんですよ」とのこと。

 中学・高校はスポーツの実績で進学できるわけではなく、一定の学力も必要。私立なので授業料の問題があり、簡単に進学を勧められる状況ではないからだ。「この前集まった120人のうち、1人くらいいればいいかな、と思っています」と言う。自身の2人の子供が、その第1号として同時に同志社香里高校と中学へ進んだとのことなので、後に続く選手も出てくるだろう。

 しかし、勝つことだけを意識しての指導に偏るつもりは毛頭ない。「レスリングを通じて、負けても頑張れる子をつくり、多くのことを学んでくれれば、他の競技や他のチームに進むことがあってもいいと思っています。レスリングの楽しさを知ってくれれば」。闘いは始まったばかりだ。







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