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2020.02.12

【特集】インターハイも国体も縁がなかった高校時代、はい上がった“雑草”がアジアへ挑む…男子フリースタイル70kg級・原口伸(国士舘大)

原口伸(国士舘大)

 今月18日(火)からインド・ニューデリーで行われるアジア選手権。男子フリースタイル70kg級は、昨年12月の全日本選手権で初めて“全国タイトル”を手にした遅咲き選手、原口伸(国士舘大)が出場する。初めての全国タイトルが全日本王者だったという選手は時たまいるが、高校(鹿児島・樟南)時代にインターハイも国体も出場できず、そこからはい上がった選手は、そう多くないだろう。

 国際大会の出場は2015年のアジア・カデット選手権(インド)以来。「久しぶり。やるだけ、という気持ちです」。それでも、昨年7月に石川県で行われた全日本合宿に参加した時にはアゼルバイジャンのチームも参加しており、その時に肌を合わせて、「けっこう脚は取れました。その後の処理に課題は残りましたが、やりづらさや怖さはなかったです」との感想。初出場ゆえの思い切りのよさが出せれば、十分に期待できるだろう。

国士舘大の“個性を尊重する練習”で実力アップ

 父がレスリング道場(串良クラブ)を運営しており、2人の兄がレスリングに取り組んでいた。末っ子の原口は、道場には行ってもレスリングはやらず、遊んでばかりいたという。「中学3年生の時に、ちょっと本気になってやって、全国大会も出ました」。この時の初戦(2回戦)の相手が、現在でもライバルの一人である志賀晃次郎(京都・男山三=現拓大)。1分43秒、0-8で敗れている。

高校時代の唯一の全国表彰台だった2015年JOC杯カデット63kg級(左端が原口)

 樟南高校へ行ったのは「正直言うと、2人の兄が行ったからなんです」。レスリングに打ち込むためではなかったようだ。だが合宿所暮らしを経験し、「しっかりやらないとならんな」と思ったと言う。

 当時の鹿児島県は鹿屋中央高校の全盛期。原口が3年生になる直前の2016年全国高校選抜大会の学校対抗戦で優勝し、個人戦でも猛威をふるっていた。インターハイも国体も、原口の出番はなかった。辛うじて2015年JOC杯カデットで2位となり、2016年全国高校選抜大会に九州チャンピオンの成績で出場できただけだった(3回戦で優勝した梅林太朗=東京・帝京、現早大=にテクニカルフォール負け)。

 それでも、JOC杯2位は自信になり、将来が見えた。兄に続いて国士舘大へ。最初は好成績を出せなかったが、和田貴広監督からは「強くない自分に対しても、きちんと目をかけてくれ、自分のやり方を尊重してくれた」との指導を受けた。「押しつけられての練習ではなかったです。弱いのに、伸び伸びした練習をやらせていただいたことで、よけい頑張ろう、という気持ちになりました」と振り返る。

勝つために必要なことは、「余計なことを考えない」

 何よりも学んだのは、1年生の時の4年生で主将だった奥井眞生(現自衛隊)の人間性だと言う。「レスリングが強ければ、それでいい、ではないことを学ばせてもらいました」。昔の体育会なら「神様(4年生)とゴミ(1年生)」の関係だが、「とんでもないです。すごくよくしていただいて、1年生が眞生先輩を“いじる”くらいなんですよ」と笑う。

昨年8月の全日本学生選手権、諏訪間(赤)の終了間際の猛攻に2-1のリードを守れなかった=撮影・矢吹建夫

 こうした環境の中で力をつけ、昨年6月の全日本選抜選手権では3位入賞を果たし、全日本合宿参加も果たした。しかし、8月の全日本学生選手権では、決勝まで進みながら、2年後輩の諏訪間新之亮との同門対決にラスト5秒で逆転負け。諏訪間の1年生王者を許す結果となった。

 この時は、試合前に諏訪間から「練習みたいな感じですよね」と言われたというが、原口は上級生として「勝たなければいけない」というプレッシャーでガチガチになっていたそうだ。「練習通りにはできなかったですよ」と言う。

 翌月、ターゲット選手の外国合宿でカザフスタンの世界選手権を訪れ、世界のレスリングを直に見て刺激をもらい、気持ちはやや持ち直したが、本当の意味での再起は、11月に地元の鹿児島であった全日本大学選手権だった。結果は出なかったが「自分の持っているものをすべて出せた」という試合ができ、気持ちを上向かせることができた。「インカレの2位より、大学選手権で力を出し切れたことの方が大きかったです」と言う。

同期の乙黒拓斗の“自己に厳しい姿勢”から刺激を受ける

 「もう一度、基礎からしっかりやろう」という気持ちが、全日本選手権で諏訪間へのリベンジを果たし、優勝につながった。決勝の相手は高校生(高田煕=千葉・日体大柏高)だったが、インカレでの失敗を生かし、「相手を意識することなく試合ができた」と振り返る。「余計なことを考えなければいいんですよね」-。

アジア選手権へ向け、全日本合宿で練習する原口

 表彰台に昇った感想は「夢を見ているみたいでした」だったが、アジア選手権出場という現実が、すぐにやってくる。「プレッシャーは感じないと思います。ありのままの自分でいけばいい」。具体的な目標の成績を決めると、それにがんじがらめになってしまうので、「一戦、一戦です」と言う。

 すぐ下の階級には、同じ年齢の乙黒拓斗(山梨学院大)がいる。全日本合宿で接してみて、「次元が違う」と感じたそうだ。「自主的にすごい練習をこなしている。今の自分では駄目だな」という刺激も受けている。

 今年は、アジア選手権のあとも、副主将として臨む東日本学生リーグ戦、全日本選抜選手権、昨年の雪辱を目指す全日本学生選手権、そして鹿児島国体、U23世界選手権と、目標は多くある。卒業後もレスリングを続ける気持ちになったので、今年はしっかり結果を残したいと言う。その手始めとなるアジア選手権に全力を尽くす-。







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