日本レスリング協会公式サイト
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2020.04.07

【特集】「自分が試される期間として、活動開始までの準備をしてください」…東日本学生連盟・吉本収理事長(神奈川大監督)に聞く

 新型コロナウイルスの感染拡大により、大会の開催中止のみならず、練習の制限・禁止も余儀なくされているスポーツ界。体力のある現役スポーツ選手といえども感染の可能性があり、拡大防止のためにも活動制限はやむをえまい。

 レスリング選手や指導者は、どんな思いでこの状況の中にいるのか。東日本学生連盟の吉本収理事長(神奈川大監督)に現場の状況を聞くとともに、5月20~22日に予定されている同連盟最大のイベント、東日本学生リーグ戦開催の可能性などを聞いた。(4月4日、ビデオ・インタビュー)


ビデオ・インタビューに答える東日本学生連盟・吉本収理事長(神奈川大監督)=本人提供

 ――日本では2月の初めあたりから騒がれた新型コロナウイルス。当初、大学の対応はどんなだったのでしょうか?

 吉本 神奈川大の話になりますが、横浜港のクルーズ船の集団感染が起きた2月上旬には、同じ県内だけに「もしかして?」という懸念はありました。感染が徐々にですが広がるにつれて不安が大きくなり、2月下旬には卒業式の中止が決定。翌週には入学式の中止も決定しました。学内施設については、スポーツセンター、図書館、就職支援室等を閉館、もしくは時間短縮、学生以外の一般利用が中止となりました。不特定多数が来校する各種行事、例えばオープンキャンパスや就職説明会なども中止するなど、外部から守る制限が取られました。

 ――学生に対する注意の喚起などは、どんなだったでしょうか。

 吉本 学生および教職員に対し、中国全土への渡航禁止や中国以外の国への渡航自粛などが通達されました。3月初旬の入試では、机を1席ずつ空け、間隔を取って着席させるなどして、1つの教室に入れる受験生を少なくし、体調不良者の対応準備などでピリピリしていました。試験監督者は全員マスク着用でした。

 ――クラブ活動に対する制限は?

 吉本 2月下旬、政府から小中高等学校の休校要請が発令された日に大学の緊急対策会議が開かれ、3月中の活動自粛要請が決まりました。(禁止ではなく)指導者の判断に委ねられていたので、手洗い、うがい、換気や除菌の徹底、練習時間短縮などの感染防止策をとったうえで実施しました。不安を感じる部員には練習参加を強制しないなど、かなり神経を使う状況でした。

 ――新入部員が入り、一番強化に力を入れるべき時期ですが、それとはかけ離れた状況だったわけですね。

 吉本 練習は本学部員のみとし、他大学との往来(出げいこや受け入れ)は禁止。例年は多くの大学が他大学の練習に参加し、交流によって強化する時期ですが、今年は行えませんでした。ほとんどの大学がこのような対応のようです。残念ながら、卒業生送別会も会食を伴うため自粛となりました。

 ――2月27日にU13ジャパンオープン(3月7~8日予定)の中止が決まり、2日後には全国高校選抜大会(3月27~29日)も中止へ。この頃から、スポーツを取り巻く環境への懸念がいっそう高まった。東日本学生連盟の対応は、どんなだったでしょうか。

 吉本 東日本学生連盟の大会は5月20~22日のリーグ戦が皮切りでした。当初は「5月なので何とかなるかも?」という甘い期待がありました。しかし、次々と大会中止が決まり、プロ・スポーツや他競技の延期や中止などの現実を見て、「開催できるのか?」と、日に日に不安が現実味を帯びてきました。開催まで2ヶ月を切った3月下旬、感染が急激に拡大してきたため、緊急常任理事会を招集して対応を協議しました。

かなりの大学で4月は活動禁止または自粛

 ――3月、東京オリンピック予選の延期のみならず、オリンピックの延期や中止が話題となり、異常な事態であることをだれもが感じたはずです。選手の動揺は?

 吉本 動揺はさほど感じられなかったです。情報社会なので、伝えるより先に知っていて、思ったより冷静に受け止めていました。オリンピックに絡めるような選手のいる強豪大学は、また違った反応があったかもしれませんけど(笑)。

昨年の東日本学生リーグ戦・閉会式であいさつする吉本理事長

 ――部として感染予防について取り組んでいることは?

 吉本 やはり、手洗い、うがい、ドアノブなどの除菌、換気の徹底、練習時間短縮、および練習後の居残り練習を禁止とし、すぐにシャワーを浴びるなど、できる限りの感染防止策を取りました。練習前後も、できる限り不要な場所には立ち寄らず、休みの日でもコンビニ程度の近隣以外には出歩かないこと等を指示しました。私自身は、今までにない「見えない敵と闘う」ということで、練習中も感染者を出さないことばかり考えていて、かなり神経をすり減らしましたね。

 ――他大学の情報も入っていると思う。練習などは、どんな感じだったのでしょうか。レスリング部から感染者が出た、という情報は?

 吉本 今のところ感染者情報はありません。練習は、どの大学もだいたい同じような対応だと思います。大学によっては、マット練習を少人数に分けて実施したり、ランニングやウエイトトレーニングに切り替えたりなどの工夫をしていたようです。

 ――4月3日には、クラブ名は明らかにしませんでしたが、日体大が女子学生の感染を発表しました。大学スポーツ界の状況がさらに変わりそうですね。

 吉本 現在、加盟大学の活動状況を収集中です。大学により期限のばらつきはありますが、かなりの大学で4月中の活動禁止または自粛要請が出て、練習できないか、自主トレのみ可となるようです。寮や合宿所のある大学では、実家への帰省指示が出た大学もあります。どの大学も規制期間はさらに延びそうだと懸念しています。

4月20日に東日本学生リーグ戦の可否を判断

 ――東日本学生連盟では、5月20日(水)~22日(金)に東京・駒沢体育館で東日本学生リーグ戦を予定しています。これまで、年間最大のイベントであるリーグ戦が中止になったことはない。今年の大会の実施の可能性は?

 吉本 4月1日に緊急理事会をメール会議で行い、20日を最終判断日とする決議をしました。ただ、緊急事態宣言やロックダウン等の事態が起きれば、判断を早める可能性はあります。状況は悪化の一途ではありますが、伝統ある大会なので判断のプロセスも大事です。急がずに段階を踏んで決めていきます。同時に、具体的な判断をするため、各大学の活動状況報告を収集中です。現状、極めて厳しい状況であると感じています。
・感染リスクの完全排除
・選手のコンディション確立(練習不足懸念)
・大学から部へ大会参加禁止指示がない
・駒沢体育館の通常利用(現在、4/12まで休館措置)
 この4つが揃わないと開催は不可能に近いと認識しています。政府が長期戦を覚悟している今、大学の名誉をかけた闘いも大事ですが、ウイルスとの闘いが最重要であると思慮しています。

東日本学生レスリング界が最高に盛り上がるリーグ戦。今年の開催は?

 ――JOCジュニアオリンピックカップ(4月25~26日予定)が中止となっただけに、リーグ戦も中止となると、選手のモチベーションは下がる一方だと思う。

 吉本 確かにモチベーションは下がらざるをえないと思います。ここは、所属大学の指導者にお任せするしかないところです。今一度、レスリングの魅力を伝え、希望を持たせるためのご指導を各所属指導者にお願いしたいと思います。コロナウイルス感染の終息の兆しが見えてくるようであれば、追加の大会を含めて何かできることがないか検討したいと思います。

 ――連盟では、6月24日(水)~26日(金)と11月24日(火)~26日(木)に東日本学生選手権のため駒沢体育館を押さえている。春季の東日本学生選手権を中止にし、6月下旬にリーグ戦を延期して実施するのも一案ではないか?

 吉本 確かにそれも考えました。しかし、東日本学生選手権はインカレと天皇杯(全日本選手権)の参加資格を得られる大会です。理事会での議論が必要ですが、簡単に差し替えられることではないです。でも、リーグ戦はやりたいですよね。

 ――西日本では、2009年の新型インフルエンザのパンデミック(世界的蔓延)の時、春季リーグ戦を7月の新人戦予定の日に実施、新人戦を8月に関大体育館でやったことがありました。

 吉本 感染が終息へ向かっていればという前提での私的な構想ですが、駒沢体育館が使えなければ、各大学の体育館、またはレスリング場に試合を振り分けて開催するとかの方法もあるかと思います。この苦境ですから、「今まで通りじゃないとダメだ」というこだわりを捨てれば、できなくはないと考えます。バスケットボール連盟のリーグ戦は、本学体育館で毎週試合していますよ。

選手ができることは「自分にできる努力と感染しない努力」

 ――こうした状況下、各選手に伝えたいことは?

 吉本 本当に厳しい状況ですが、今、選手にできることは感染防止です。状況を理解して、焦らずに、「自分にできる努力と感染しない努力」を続けるしかありません。動ける身体なのに練習できないことで、苦しいと思いますが、この異常事態の中では先入観や思い込みを捨てることが必要です。集団での練習を中断することは、新型コロナウイルスの感染拡大防止のためには賢明な選択です。スポーツに学び、スポーツで自己の心身や発想、そして判断力を鍛えてきた今こそ、そのスポーツで培った英知を活かし、社会の一員として賢明な行動をしてください。新入生は、(高校での活動を終えた)2月末から練習できなかったと思います。進んだ大学でも活動できないのでは非常にやり切れないと思いますが、「自分が試される期間」として希望を持ち、活動開始までの準備をしてください。

 ――マット上での練習がすべてではない、と。

 吉本 昔と違い、今はネットという強い味方があります。ゲームではなく、レスリング動画を見て、多くの技を頭で覚えることもできます。もちろん、本業である学業との両立も忘れないでいただきたい。どの大学も年間の行事予定が大幅変更となり、授業開始が1ヶ月以上延びることで、かなり詰め込んだ授業形態になると思われます。しっかり対応して単位取得を目指してください。感染が終息して大会が開催され、選手の皆さんのはつらつと闘う姿が見られる日が来ることを祈っています。







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