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2020.05.27

【特集】ブランクをエネルギーに変え、女子プロレスの真のエースを目指す橋本千紘(東京・安部学院高~日大卒)

(文=布施鋼治)

必殺技ジャーマンスープレックスを駆使し、プロレス界を席巻する橋本千紘=撮影・山内猛

 「試合をやったのは3月28日の仙台大会が最後。もう2ヶ月近くやっていません。こんなに長いブランクは初めてなので、早くリングに立ちたいですね」

 5月下旬、電話越しに橋本千紘(東京・安部学院高~日大卒)は、そう訴えてきた。かつて女子レスリングの重量級ホープとして活躍。東日本学生女子選手権は4年連続で制している。日大卒業後は、センダイガールズプロレスリング(以下「仙女」)入りを果たした。

 レスリングを始める前、橋本はプロレスラーを志し、中学生時代に同団体のプロテストを受験し、合格している。当時仙女の代表を務めていた新崎人生から「半年でもいいから柔道かレスリングをやった方がいい」というアドバイスを受け、レスリングを始めた。

 その後、プロレスへの思いはあえて封印。安部学院高や日大でレスリングにどっぷりと漬かったが、大学を卒業する間際、久しぶりに見たプロレスに心を奪われ、仙女のトップである里村明衣子に入門を直談判した。

地元に密着した団体、試合と練習の合間に地元農家のお手伝い

 その思いが通じ、仙女でプロレスラーになってからは順風満帆。すでに何度も同団体の象徴であるセンダイガールズワールドシングル王座のチャンピオンベルトを腰に巻き、現在も保持する。得意技は“オブライト”と称される高角度のジャーマンスープレックスだ。

地元農家の作業を手伝う橋本。見事にビルトアップされた体をアピールする=本人提供

 しかし、新型コロナウイルスはプロレス界にも大きな影響を与え、4月以降予定されていた仙女の興行は次々と中止。4月半ば以降は仙台市内にある道場での練習も禁止された。「ゴールデンウイーク明けまでは道場にも行けないことになり、自宅でトレーニングすることになりました。同じメニューを何セットも繰り返す感じでやっていましたね」

 仲間との練習も禁止されていたので、さぞかし鬱憤(うっぷん)がたまっていると思いわれるが、橋本は「意外と新しい発見もあった」と打ち明ける。「それまではゆっくりすることもできなかったので、新しいトレーニングを発見したり、違うことを考えたりしたので、そんなにストレスはたまらなかったですね」

 無理もない。仙台を活動の拠点に置いているとはいえ、コロナ禍が発生する前は月の半分は東京や大阪で開催される興行に足を運ぶ生活が当たり前だった。「今は(移動がない分)疲れもたまらないので、コンディションはバッチリですね」

2012年全日本学生選手権で優勝、学生チャンピオンに輝く(左)

 毎日自炊という生活も初めてだったが、橋本は「料理のスキルはかなり上がった」と胸を張る。「レパートリー的には煮物も竹の子を最初からゆでたりして、今までとは異なる種類を作るようになりました」

 仙女では3年前から、試合や練習の合間を縫い、所属選手全員で地元の農業のお手伝いをスタートさせている。今年は興行や練習が休止になった分、お手伝いをする機会も多い。

 「プロレスができない分、違うことを、ということで手伝わせてもらっています」。

 今年は初めて菊の花の栽培を手伝うこともあったが、作業のメインは例年通り米作りだった。「先週は毎日違うところに行く形で、ずっと田植えをやっていました。機械で植えるので腰が痛くなることはないですね。お米作りは本当に大変な作業なので、経験してからは、米粒ひとつひとつのありがたみをいっそう分かるようになりました」

オリンピック代表選手に負けないトレーニング

 5月下旬の時点で、まだ興行再開のめどは立っていない。それでも、日が経つごとに緊迫した空気が和らいでいっていると感じている。「自分たちが興行をやるためには、東京から選手を呼ばなければならない。今の感じだと、東京より仙台の方が先に(観客を入れての興行を)できるんじゃないかと思います。早ければ、7~8月にできたらいいですね」

プロ入り後もハードトレーニングを欠かさない橋本=本人提供

 今でもレスリング時代の知人とコンタクトを取ることは多い。日本全体がコロナ禍に覆われると、後輩たちがちゃんと練習できているかどうかが気になり、すぐ連絡をとった。東京オリンピックの代表内定選手にも知り合いは多い。中でも76㎏級代表に内定している皆川博恵(クリナップ)とはよく連絡を取り合う間柄だ。

 「オリンピック延期のニュースを見て、すぐ『気持ちを折らず頑張ってください』とメールしました」

 皆川たちとのやりとりから刺激を受けることも多い。「負けないようにトレーニングしたいと思いますね」。試合はなくても、体重はプロレスラーとしてベストの86㎏をキープしている。

 「自分たちプロレスラーができることは、お客さんに元気や勇気を与えること。これからひとつでも多く興行をやらせていただいて、私たちのプロレスを見てほしい」

 5月18日からは道場での練習を再開した。7月1日で28歳。このまま体もスキルもテクニックもさらに進化して、世界の女子プロレスのトップに躍り出るか。







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