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2020.06.07

【記録】意外に少ない「インターハイ王者→オリンピック代表」、その原因は?

 野球の世界では、「甲子園の優勝投手は、プロでは大成しない」という言葉がある。現在までに春夏合わせて200人近くの甲子園優勝投手がいるが、プロへ進んで100勝以上マークした投手は9人(日米通算の田中将大を含む)。現在、100勝に近い投手はおらず、「9人」は当分増えそうにない。

金の卵が数多く参加するインターハイ。ふ化して世界にはばたくために必要なことは?

 これ以外にも、いくつかのデータが、その言葉を証明している。肩とひじを中心とした体の酷使で心身がボロボロになっていることのほか、「プライドが邪魔をし、謙虚になって汗まみれの努力ができない」「アマでは飛び抜けていてもプロでは普通。飛び抜けていただけに、飛び抜ける工夫を考えることができない」などとつけ加える評論家もいる。

 レスリングではどうか。インターハイの個人戦優勝選手(男子)が、どれだけオリンピック代表になっているかを調べてみた。

 インターハイは1954年にスタート。2016年リオデジャネイロ・オリンピックの代表になった樋口黎が2013年大会で優勝しているので、2013年大会までを区切りとすると、複数回の優勝選手を含めて「432人」がチャンピオンになっている。

 この中でオリンピック代表になったのは「45人」(10.4%)。すなわち、「9.6人に1人」の割合でしかない。インターハイは毎年、オリンピックは4年に1度という門の狭さの違いを考えても、意外に思う人もいるのではないか。

 昭和時代は、高校に入学してからレスリングをやるのが普通で、2年4ヶ月のキャリアでの優劣は参考にならないとも考えられる。では、キッズ出身者が多くなった平成(1989年)以前と以降に分けて調べてみる。

■1954~1988年=インターハイ王者「254人」の中で、オリンピック代表は「34人」(13.4%=7.5人に1人)
■1989~2013年=インターハイ王者「178人」の中で、オリンピック代表は「11人」(6.2%=16.1人に1人)。

 前者は国内予選を勝ち抜けば代表になれたのに対し、後者は世界とアジアの予選が導入されているので、これまた単純に比較はできまい。ならば、予選のない世界選手権を合わせた世界大会出場数を示してみる。

■1954~1988年=インターハイ王者「254人」の中で、オリンピック・世界選手権代表は「59人」(23.2%=4.3人に1人)
■1989~2013年=インターハイ王者「178人」の中で、オリンピック・世界選手権代表は「39人」(21.9%=4.6人に1人)

高校三冠王者でもオリンピックへは6~7人に1人!

 「インターハイ王者→日本代表」の割合は、キッズ・レスリングが盛んになる前の方が上回っているが、予選制導入、オリンピック階級数の削減などの理由を勘案すると、ほぼ同じと考えていい。インターハイ王者で世界選手権かオリンピックの日本代表になれるのは「4.6人に1人」、オリンピック代表になれるのは「16.1人に1人」というのが、予選制が導入された現在のレスリング界の数字ということになる。

キッズからの順調な成長の見本とも言える松永共広(現神奈川大コーチ)。全国少年少女5連覇~全国中学3連覇~2年連続高校三冠王~2年連続学生二冠王~全日本王者~2008年北京オリンピック出場=写真は北京大会

 ちなみに、全国高校選抜大会、インターハイ、国体の年間3大会を制した選手はどうか。全国高校選抜大会で全国レベルの個人戦が実施された1975年から2013年までに、2年連続を含めて「107人」の高校三冠王者がいる。この中でオリンピック代表になったのは「16人(15.0%=6.7人に1人)」。無敵の高校王者でも、6~7人に1人しかオリンピックへ行けないのが現実で、本当に狭き門だ。

 インターハイ優勝などの輝きは素晴らしく、決して否定されるものではない。一方で、その栄光はオリンピックへの道を保証してくれるものでもない。優勝を逃した数多くの選手がリベンジ魂を持って向かってくるし、年上の強豪選手との闘いも待っている。

 オリンピックへの闘いは高校卒業後が本番。インターハイ王者を経験していない代表選手は何人もいる。致命的な故障がなく、実力を伸ばして大学と社会人の強豪が集まる過酷な闘いを勝ち抜いた選手がオリンピックのマットに立てるのであり、高校時代の実績ではないことを、データははっきりと示している。


高校三冠王者→オリンピック代表選手

No. 選 手 名 三冠王達成年 階 級 所属高校 オリンピック出場
16 樋口 黎 2013年 55kg級 茨城・霞ヶ浦 2016年
15 高谷惣亮 2007年 74kg級 京都・網野 2012・16年
14 磯川孝生 2002年 85kg級 大分・日本文理大付 2012年
13 松永共広 1997・98年 46・49kg級 静岡・沼津学園 2008年
12 小幡邦彦 1997・98年 74・76・90kg級 茨城・霞ヶ浦 2004年
11 井上謙二 1994年 54kg級 京都・網野  〃
10 小幡弘之 1986年 +75・+87kg級 埼玉・埼玉栄 1988年
9 笹山秀雄 1984・85年 48kg級 青森・光星学院 1996年
8 赤石光生 1982年 65kg級 青森・光星学院 1984・88・92年
7 本田多聞 1981年 +75・+87kg級 茨城・土浦日大  〃
6 小林孝至 1980・81年 48kg級 茨城・土浦日大 1988年
5 佐藤 満 1979年 48・52kg級 秋田・秋田商 1988・92年
4 宮内輝和 1978年 +75・+87kg級 栃木・足利工大付 1980年
3 上村政和 70kg級 鹿児島・鹿児島商工 1984年
2 栄 和人 65kg級 鹿児島・鹿児島商工 1988年
1 富山英明 1975年 52kg級 茨城・土浦日大 1980・84年






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