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2021.02.04

【特集】フルタイム勤務と両立! 9年ぶりの日本一に輝き、アジア選手権に挑む…男子グレコローマン97kg級・天野雅之(中大職)

 

中大職員としてフルタイム勤務しつつ、全日本王者に輝いた天野雅之

 コロナ禍が収束していない中で行われた2020年全日本選手権。ブランクが原因かどうかは定かでないが、オリンピック・アジア予選代表の何人かが優勝を逃すなど波乱がいくつか起こった。男子グレコローマン97kg級もそのひとつ。アジア予選代表の奈良勇太(警視庁)が、これまで2位の多かった志喜屋正明(自衛隊)に準決勝で敗れ、その志喜屋も決勝で敗れた。

 優勝したのが、32歳のベテランで、フルタイムの仕事をこなしている“純アマチュア選手”の天野雅之(中大職)。「コロナの影響で選手が厳選され、試合が少なかったのは、ベテランのボクにとってはよかったです。2試合に集中できた」という追い風はあったものの、昨年の1~3位選手が出場し、決勝で闘った志喜屋は、これまで4度闘ってまだ勝ったことのない相手。そんな困難に打ち勝っての栄冠だった。

 どの選手も思うような練習がこなせない期間が続いた。天野は「焦りなどが試合にあったかと思います」と分析する。天野もマットでの練習ができない期間が多かったが、フルタイム勤務の大学職員として、コロナ以前から個人での練習をこなしつつ実力をキープしていた。

98kg級でのデビューは奈良勇太(警視庁)に完敗!

 それがゆえに、練習量の少なさは試合に影響しなかった。「もつれる展開となっても、冷静に試合を進めてしのぐことができました」と振り返る。最近は他大学や全国の高校などに指導に行くことが多く、指導者の視点でレスリングを見てきたことも、冷静さを維持できた要因だった。豊富なキャリアが作用しての優勝だったと言えよう。

2011年、23歳で84kg級全日本王者に輝いた天野=撮影・矢吹建夫

 84kg級で大学王者に輝き、2011年に全日本選抜&全日本チャンピオンに輝いた頃から世界へ飛び出す選手として期待された。2012年ロンドン・オリンピックは逃したが、2014年世界選手権で8位に入賞している。だが、2016年リオデジャネイロ・オリンピック出場はならなかった。

 年齢と仕事からして、選手生活からの引退が自然の流れと考えられ、本人も「第一線でずっとやっていける、という自信はなかった」と振り返る。しかし、「大好きなレスリングは続けたかった。できるところまでやってみたい」として、マットを下りることはなく、全日本選抜選手権、国体、全日本選手権の3大会はノルマのように出場。仕事をしながらでは減量に限界が出てきたので階級を上げることにしたが、それでも上位入賞を続け、現在に至っている。

 階級アップのデビュー戦は2017年全日本選抜選手権98kg級。優勝した奈良勇太には、1分11秒、0-9のテクニカルフォールで完敗。「体だけ大きくしたようなものでした」と振り返り、筋力が追いついていなかったと言う。

31歳・高谷惣亮の活躍に、「レスリングは年齢ではない」と確信

 筋力トレーニングの成果もあって、その後はコンスタントに上位に食い込み続けることができたものの、「優勝」には手が届かなかった。ある程度の年齢の選手がこうした状況に置かれたとき、「もう優勝は無理な年齢なのか」と思うのか、「頑張ればまだ手が届く」という気持ちなのか。天野は「どっちの気持ちもありました。でも、100パーセント駄目だ、という気持ちはなかった」と言う。

2014年世界選手権(ウズベキスタン)で闘う天野。8位に入賞した=撮影・保高幸子

 引退を決めた選手がよく口にする言葉に、「負けても悔しい気持ちが湧かなくなった」という言葉がある。天野は、負けたときにまだ悔しさがあったと言う。何よりも「レスリングが好きですから」と、心が折れなかった理由を話した。

 97kg級で初の全日本チャンピオンに昇り詰めたことで、再び国際舞台への道がつながった。4月のアジア選手権(カザフスタン)への参加の意思は伝えており、「積み重ねてきたものでどう闘えるのかを確認したい」と言う。10月の世界選手権(ノルウェー)を目指す気持ちも盛り上がっている。

 32歳は、男女30階級の優勝選手の中で最年長。高谷惣亮(ALSOK)が31歳で10連覇を達成し、オリンピック出場を目指していることから、「レスリングは年齢ではない」という気持ちを強く持てるようだ。コロナ禍がおさまらないこともあり、現在も夜間に一人でジムに通うことが多いそうだ。夜10時から練習開始というときもある。

約5年ぶりになる味の素トレセンのマット、「ドキドキしています」-

 ただ、「レスリングで今の仕事を選んだのではありません」と、アジア選手権に臨むにあたっては、仕事免除などの優遇は特に求めない。「スポーツで収入を得ているアマチュアも出てきましたが、社会人生活をしながらスポーツに打ち込む人間なればこそ、次代の選手に届けられるものがあると思うんです」。

9年ぶりに日本一に輝いた2020年大会=撮影・矢吹建夫

 選手をやめたとき、何も残らない人間になってはいけない。学生時代から感じていたことであり、中大の後輩にも伝え、見せていきたいと思っている。その姿勢を貫くつもりだ。

 もちろん、出場する以上は勝つことが目標であり、日本代表ならば生半可な気持ちでいてはなるまい。仕事との兼ね合いもあるが、できるだけ全日本合宿に参加して実力アップをはかり、外国選手の闘いを研究して臨みたいと言う。「トップ選手が集まる(全日本の)練習というのは気が引き締まるんです。NTC(味の素トレーニングセンター)のマットに立つのも、5年ぶりくらいになるかな。ドキドキしています」と笑う。

 若い頃に比べて体力は落ちても、技術と経験、冷静さを武器に闘う腹積もり。フルタイム勤務の大学職員では、2014年アジア大会(韓国)に青山学院大職員になりたての長谷川恒平が出場して優勝した例があるが、勤続10年の選手が日本代表になった例はない。“純アマチュア選手”の天野が2021年に燃える。







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