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2021.03.28

【2021年全国高校選抜大会・特集】佐賀在住20年目の快挙にも、意外に冷静な小柴健二監督、その理由とは?…佐賀・鳥栖工

 

決勝進出の壁を破り、一気に優勝旗を奪取した鳥栖工=撮影・保高幸子

 64回を迎えた風間杯全国高校選抜大会の学校対抗戦・優勝に佐賀県の高校が初めて名を刻んだ。一昨年3位、昨年はベスト8だった鳥栖工が5試合を勝ち抜いて優勝。インターハイを含め、佐賀県勢として初めての全国一に輝く快挙を達成した。

 指揮官は1998年アジア大会銀メダルの実績を持つ小柴健二監督(日体大卒)。昨年は個人戦で2選手を優勝させるなど指導手腕には定評があり、学校対抗戦でもコンスタントに上位に顔を出していた。だが、決勝進出の壁は高く、ファイナルのマットに到達することはできなかった。今回が初の決勝進出、そして優勝という快挙だ。

 試合後、各選手の健闘をねぎらいつつ、「個人戦でもしっかり(闘え)」と鼓舞した小柴監督は「去年は優勝候補と言われながらベスト8。悔しい思いをしてきましたので、よかったです」と、極めて平静に優勝の喜びを話した。佐賀県の教員となって丸20年。悲願の全国一なら、もっと興奮し、喜びを全身で表してもいいのではないか。

白川剣斗(1年)の逆転勝ちがチームのいい流れをつくった

 無観客大会のため、ふだんなら応援席から怒涛のように送られる声援がなかったことが、大きな要因だろう。応援は選手や監督の気持ちを高ぶらせ、優勝の喜びを倍増させる。他に、60kg級で実質的にチームの優勝が決まり(125kg級は不戦勝のため、3勝した段階で優勝決定)、時間が経っていたという理由も考えられる。

粘って貴重な先制白星をマークした51kg級の白川剣斗=同

 高体連専門部の某役員は「優勝のときにするべき振る舞いが分からなかったのでは」と推測した。初めて栄冠を勝ち取った選手にはありがちなこと。実感が湧かず、どう喜んでいいのか、どんな行動をとればいいのか、戸惑ってしまっている選手は、ときたま見かける。

 だが、このあと小柴監督の口から出てきた言葉から推測すると、どれも当たっていないかもしれない。その言葉を紹介する前に、決勝のいなべ総合学園高(三重)戦を振り返ると、51kg級に出場した白川剣斗(1年)が先制された試合をラスト30秒で逆転して勝利をもぎ取ったことが、優勝を引き寄せることに大きく作用した。

 この流れが、前年の個人戦王者同士の激突となった55kg級につながった。鳥栖工は51kg級王者の尾西大河、いなべ総合は55kg級王者の弓矢健人。2019年インターハイ個人戦55kg級での対戦では弓矢が8-0で勝っており、小柴監督の脳裏には「ここは厳しいかも」という気持ちがあったという。

練習試合を増やし、試合に近い練習を重ねた

 白川の粘り勝ちが尾西に勢いをつけた。相手の両脚の間に頭を入れて回すアンクルホールドがさえ、7点をゲット。最後はやや逃げてしまったものの、序盤のリードを守り切って勝利。次の試合が2019年に1年生インターハイ王者に輝いている小野正之助だったので、この時点で優勝を確信したという。

55kg級の尾西大河が続き、流れは鳥栖工に大きく傾いた=同

 頭を入れてのアンクルホールドは、中村倫也(りんや=埼玉・花咲徳栄高~専大、2018年U23世界王者、現総合格闘家)の必殺技だったので、レスリング界では「リンクル」とも言われている。「実は…」と小柴監督。現在の嶋江翔也コーチが高校の時、新潟インターハイ(2012年)の学校対抗戦・個人戦とも中村にこの技でやられたという。

 現在、小柴監督をアシストする嶋江コーチからすれば、奇しくも同じ新潟で教え子が“嫌な思い出”を払拭(ふっしょく)してくれたことになる会心の優勝だったと言えるのではないか。

 九州大会が新型コロナウィルスの影響で中止となり、弾みもつけられず、自他の戦力分析もできない状況下での大会。「練習試合を増やし、試合に近い練習を多くしてきました」という工夫が実った。

九州・沖縄のチームが未達成の春夏制覇を目指す

 小柴監督は群馬県生まれで、群馬・関東学園高卒。佐賀県をレスリング強国にしてほしいと請われ、永住を決意して王国づくりを手掛けた。「最初は素人集団のチームで、人数もいなかった。多くの人のサポートでここまで来ることができました」と、全国一を目指して闘った20年間を振り返る。一方で、インターハイへの思いも口にする。

負傷した選手を心配そうにのぞき込む小柴健二監督。佐賀県へ移って20年目で栄冠を勝ち取った=同

 この大会では、2012年に浦添工(沖縄)、2016年に鹿屋中央(鹿児島)が優勝しているが、ともにインターハイでは優勝できず、九州・沖縄で春夏制覇を達成したチームは、1978年の鹿児島商工(鹿児島)以来、生まれていない。「ウチにそのチャンスができました。しっかり鍛えてインターハイも取りたい」と、さらなる快挙を目指す気持ちを話し、「そのためにも、個人戦でも頑張らせます」と力強く話した。

 これが、喜びの表情が少なかった理由か? そうではない。「来月、角(雅人=同校OB、現自衛隊)がオリンピックのアジア予選に出ます。オリンピック選手を育てることが目標なんです」-。小柴監督の目標は、オリンピック選手の輩出。国内大会の栄光は、その過程のひとつだ。その気持ちが、喜びを表に出さなかった一番の理由なのではないか。

次は応援席からのあふれんばかりの祝福を受けての優勝!

 とはいえ、指導者は教え子の快挙に手放しで喜ぶことも必要。“ミスター・ジャイアンツ”長嶋茂雄監督は、“シーズン中の1勝”であっても、サヨナラ勝ちのときなどは子供のように無邪気に喜び、選手に祝福と感謝の気持ちをたっぷり伝え、それが選手のやる気につながったと言われている。

 応援席からあふれんばかりの祝福を受け、顔をくしゃくしゃにして健闘した選手を抱きしめることがあってもいい。「次は大勢の応援の中で優勝したい」と小柴監督。早ければ、今夏のインターハイでそのシーンが実現する!







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